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伝統工芸小売業インバウンドEC・通販

創業100年超の老舗が、二極展開という選択をした——節句人形店のインバウンド戦略

2026-04-30

企業概要

項目 内容
業種 節句人形販売(雛人形・五月人形・甲冑)
所在地 東京都内
売上高(支援開始時) 数億円規模(前期比減)
支援期間 進行中

支援前の状況

都内に本店を構える節句人形の老舗。創業100年を超え、現在は三代目が経営を担う。雛人形・五月人形を中心に、決め込み人形や作家もの(特定の職人が制作した高品質品)を主力とし、長年のリピーター顧客を抱えてきた。売上は数年で約2割落ち込み、赤字が続いている。

見えてきた本質的な課題

「一番の問題は集客です。集客ができれば在庫もはけていきますので、集客をどうするかというところです。」

市場を丁寧に掘り下げると、数年前から業界外の参入業者が「おもちゃのような価格で、おもちゃのような品物」を節句品として販売し始め、市場が急速に二極化していた。低価格帯の商品が台頭する一方で、同社の主力価格帯は「高い」と認識される。同社が業界に先駆けて広めた「インテリアに合う節句人形」というコンセプトを他社が真似してきた歴史もある。

ECと店舗の売上比率は6:4。しかしECの平均客単価は店舗より約1万円低く、価格競争に巻き込まれやすい構造がある。一方で老舗としての立地と長年の歴史に裏づけられた決め込み技法という本物の強みは、外部に十分伝わっていなかった。

支援内容

EC改善:SEOと商品ページの内製化——競合他社と自社のサイト構成を比較分析し、必要なページを優先度をつけて自社制作する方針を立てた。代表者がAIを活用してコーディングを含む制作作業を進め、外注に依存せずに多数のコンテンツを短期間で仕上げた。「外注に頼むと1〜2週間かかる作業を、AIを使うことで即日対応できるようになった。」

二極展開:高品質路線の維持と縁起物の年間展開——節句人形(高品質・高単価)は引き続き同社の核として維持しながら、年間を通じて販売できる縁起物ライン(七福神・招き猫・十二支など)を新たな収益の柱として整備した。縁起物は季節に関係なく販売できる上、インバウンド需要とも連動しやすい。

インバウンド集客の設計——観光客が多いエリアという立地を活かし、外国人観光客への展開を設計した。甲冑は欧米の観光客に人気が高く、「武具ではなく厄除けのお守り」という切り口で戦いのイメージとは異なる訴求が可能だ。多言語対応ウェブサイトの構築と、バイヤーマッチングプログラムの活用も検討に含めた。

受注生産方式への移行準備——在庫リスクを下げるため、海外クラウドファンディングを活用した受注生産方式の導入を検討した。

経営改善計画書の策定——売上増加・原価率改善・EC導線最適化の三軸で数値目標を設定した。原価率はすでに数%改善しており、仕入れ見直しの効果が数字に出始めていた。

成果

外注依存から脱却し、必要なページを即時制作できる体制が整った。「インテリアに合う」「決め込みの技法」「作家ものの品質」「長年のリピーター顧客」という複数の強みが整理され、縁起物・インバウンド・受注生産という節句シーズン以外を補う収益の軸が見えてきた。「この商売の良さは、お客様が赤ちゃんを連れてきてくださって、店が幸せで満ちることです。それを守るために、別の部分で支えることが大切だと分かりました。」

支援を振り返って

この案件で印象的だったのは、「老舗が変化に正面から向き合っている」という事実でした。

創業100年超の老舗が、AIでコードを書いてウェブサイトを内製する。「よく分からないけれど、聞きながらやってみる」というその姿勢は、老舗のプライドより問題解決を優先するという経営者としての覚悟を示していました。

市場の二極化は避けられない現実です。しかし同社が「本物」を守り続けることにも、意味があります。三代にわたって培ってきた決め込みの技法、作家との信頼関係、代々来てくれるリピーターの存在——これは価格では買えない資産です。インバウンドという市場は、その「本物」を届けられる新しい相手です。文化の意味が正確に伝わるとき、価格は二の次になります。

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