Redesign
電気工事業経営改善原価管理採算管理

見積の中に、赤字の理由が隠れていた——電気工事業の採算構造の再設計

2026-06-30

企業概要

項目 内容
業種 電気工事業(店舗・テナント向け)
所在地 東京都内
規模 役員2名(夫婦)+従業員2名
支援期間 進行中

支援前の状況

夫婦で創業し、創業10年を超えた電気工事会社。店舗やテナント向けの施工を中心に事業を展開してきた。しかし数百万円規模の債務超過と赤字が続き、政策公庫のリスケ状態で返済猶予を受けていた。取引金融機関から経営改善計画書の提出を求められている状況だった。

見えてきた本質的な課題

「見積を出して受注しているはずなのに、なぜか手元に残らない。」——財務の数字を受注構造と照らし合わせながら掘り下げると、赤字の原因が見えてきた。

見積書を一緒に確認した。諸経費の計上率が10%に設定されていた。電気工事業の実態として、交通費・廃材処理費・消耗品・保険料など諸経費は20%以上が必要な構造だ。10%と20%の差は、受注1件ごとに積み上がる採算の歪みになっていた。

さらにもう一つ、致命的な見落としがあった。社長自身の労務費が見積に入っていなかった。役員であっても現場に出て手を動かしている以上、その時間はコストだ。社長が動けば動くほど採算が悪化する構造になっていたことを意味する。

加えて、大規模案件への移行に伴い工事完了から入金までの資金化期間が長くなり、売上は立っているが現金が手元にない状態が続いていた。

支援内容

見積諸経費率の見直し——諸経費の実態を項目別に洗い出し、適正な計上率に見直した。現行の10%から実態に即した率への引き上げにより、見積段階から正確な採算管理ができる体制を整えた。

社長労務費の原価算入——社長が現場作業に費やした時間を工数として原価に反映させる仕組みを導入。役員報酬を時間単価に換算し、案件ごとの投入時間に基づいて原価計算する基準を作り、案件別の真の採算性が見えるようにした。

キャッシュフロー管理の強化——入金・支払スケジュールを月次で可視化し、資金不足が見込まれるタイミングを事前に把握できる体制を整えた。大型案件については中間払いの交渉基準を設けた。

高所作業という強みの営業活用——通常より高い天井高の施工現場で他社が敬遠する案件をこなせる特殊足場を自社保有していることは、明確な競争優位だ。この強みを対外的に発信し、同業他社が断る案件を積極的に受ける営業戦略を設計した。

照明設計の提案型営業への展開——「顧客の行動に影響する照明設計」という視点で提案できる能力を営業の差別化軸として整理。単価の低い工事の受注から付加価値の高い提案型受注へのシフトを設計した。

経営改善計画書の策定——諸経費率の適正化と社長労務費の算入による採算改善の効果を数値で示し、金融機関への提出を前提とした計画書を作成した。

成果

「なぜ仕事をしても手元に残らないのか」という長年の疑問が、見積構造の分析によって解明された。諸経費率の乖離と社長労務費の未算入という、見えにくいが致命的な採算ミスが明確になり、正確な採算管理の基盤ができた。「高所作業ができることは当たり前だと思っていた。でも他社が断る仕事を取れるということが、強みだと分かった。」

支援を振り返って

この案件の核心は、「赤字の原因が見積の中にあった」という発見でした。

赤字が続いているのは「仕事が取れていないから」ではなく、「仕事を取るたびに採算が悪化する構造になっていたから」でした。諸経費10%という基準が長年使われ続け、誰もそれを疑っていなかった。見積書を一緒に開いて、実際の諸経費を一項目ずつ拾い上げていくと、数字がそのまま証言してくれました。

社長の労務費についても、「役員だから原価に入れなくていい」という暗黙の認識があった。しかし、現場に出ている時間はコストです。それが見積に入っていなければ、社長が動けば動くほど会社の体力が削られる。

この会社が持っている高所作業の能力と照明設計の提案力は本物の競争優位です。特殊な足場を自社保有している電気工事業者は多くない。この能力を「選ばれる理由」として使えるようになることが、黒字化の先にある成長の鍵だと感じています。

同様の課題をお持ちの方はご相談ください

お問い合わせ