Redesign
飲食業経営改善事業再編

売上6億円の老舗懐石料理店が問い直した「事業の本質」

2025-03-31

企業概要

項目 内容
業種 飲食業(懐石料理・複合施設)
所在地 東京都郊外(観光地)
従業員数 複数店舗を運営(パート・アルバイト含む)
売上高(支援開始時) 約6億円
支援期間 複数年にわたる継続支援

支援前の状況

300年以上の歴史を持つ古民家を活かした懐石料理店。秋川沿いの豊かな自然を背景に、複数の飲食店舗と1日1組限定の高級宿泊施設を運営する複合事業体だ。年間売上は約6億円。これほどの売上規模でありながら、営業赤字が毎期続いていた。

見えてきた本質的な課題

最初のヒアリングで「月次の売上と費用をスタッフに共有しているか」「目標に対する達成状況を確認できる場があるか」を聞いた。答えはいずれも「ない」だった。

粗利率は約70%と決して悪くない。問題は販管費が粗利を上回っていることだった。6億円の売上を支えるほどの仕事の質はあるのに、誰も数字に当事者意識を持っていない。廃棄ロスが出ても誰も気にしない。重複発注が起きても見逃される。赤字が続く本質は、組織に「数字が届いていない」ことにあった。

加えて、シフトの組み方が予約数と連動していないため、閑散期でも繁忙期並みの人員が配置されていた。冬の売上低下は毎年の課題だったが、「誰が責任を持って実行するか」が決まっていないため改善が定着しない状況が続いていた。

支援内容

予実管理制度の構築——月次で部門別・費目別の予算と実績を比較する仕組みを導入。各部門の責任者が自分の数字を把握できる体制を作った。

責任と権限の明確化——各店舗・部門のマネージャーに「自分の数字」を持たせ、目標設定から達成状況の報告まで責任の所在を明確にした。

経営情報の現場への開示——月次の売上・原価・人件費を従業員に共有開始。「自分たちの努力がどう数字に出るか」が見えるようになった。

インセンティブ制度の再設計——コスト削減で生み出した利益を従業員に還元する仕組みを設計。「数字を良くすると自分に返ってくる」構造を作った。

冬季営業企画の実行化——毎年議題で終わっていた冬季対策を実行計画に落とし込み、担当者を決め、露天こたつや季節料理など具体的な施策を試行した。

成果

営業損益はR5年度の▲4,600万円からR6年度の▲2,500万円へ、1年で約45%改善した。経営数字を共有し始めてから、現場スタッフから「支出の見える化が必要だ」という声が自然に出てくるようになり、廃棄ロスや重複発注への自発的な改善提案が生まれ始めた。担当者を決めて実行した冬季営業施策により、閑散期の売上も前年比で改善した。

支援を振り返って

この案件で一番印象に残っているのは、「問題は人でも商品でもなかった」ということです。

6億円規模の事業を回すスタッフが揃っていて、古民家という唯一無二の場所があって、料理の質も高い。それでも赤字が続いていた理由は、組織に「数字が届いていなかった」ことでした。

最初のヒアリングで「数字を共有していますか」と聞いたとき、経営者の方が少し驚いた顔をしたのが記憶に残っています。共有しないことが当たり前になりすぎていた。私がこの支援で重視したのは、スタッフ一人ひとりに「自分の仕事が数字につながっている」という感覚を持ってもらうことでした。コンサルタントが答えを持ち込むのではなく、現場から改善のアイデアが出てくる組織を作ること——そのための仕組みを一緒に作ることが、この案件の核心でした。

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