売上が増えているのに赤字——「客数×客単価」で見えた構造の歪み
2025-11-30
企業概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 業種 | 飲食業(レストラン) |
| 所在地 | 東京都内 |
| 売上高(支援開始時) | 約6,500万円 |
| 支援期間 | 全5回 |
支援前の状況
創業15年を超える地域密着型のレストラン。長年のリピーター顧客に支えられ、売上は過去3年で4,000万円台から6,500万円規模まで着実に伸びてきた。しかし営業赤字が続き、取引金融機関からの経営改善計画書の提出を求められていた。加えて、長年店を支えてきたベテラン店長が前年に退職しており、組織の基盤が揺らいでいた。
見えてきた本質的な課題
「15年やってきたわりに、なんか会社の基盤が整っていない気がしていて。まず足元を固めるところから始めたい。」——7年間店を支えてきた店長の退職により、現場の知識や判断基準がすべてその人個人に蓄積されていたことが明らかになった。マニュアルは存在せず、全員が口頭伝聞で動いていた。
ここで財務の数字に立ち返り、売上を「客数×客単価」に分解した。年間来客数は1万4,000人前後。客単価はテイクアウト含め3,800円前後。問題の核心が見えた。客数は堅調に積み上がっている。問題は客単価だ。年間1万4,000人という集客力があるのに、単価が低いために利益が出ない構造になっていた。
一方、数字の中に隠れた強みがあった。変動比率(売上高に占める材料費・変動コストの割合)が29%で推移していた。飲食業として水準の高い数字で、食材管理と原価コントロールの基礎はしっかりできていた。
支援内容
売上の分解と客単価引き上げ計画——段階的な単価引き上げのシナリオを設計。当期中に約4,800円、翌期に約6,000円(空間・食材・サービスを整えた上で)という目標を設定した。単価を上げる際は食材の品質を同時に上げることで、客数の落ち込みを最小限に抑える方針を取った。
営業時間と集客チャネルの最適化——採算の取れない時間帯の営業を縮小し人件費を削減。複数展開していたグルメプラットフォームを効果の高いチャネルに一本化した。一本化後、集中したプラットフォームのランキングが上昇し始めた。
店舗空間の再設計と補助金活用——客単価6,000円を目指す上で、テーブルレイアウトの見直し、照明の調整など「高単価に見合う雰囲気づくり」を設計。改装費用に小規模事業者持続化補助金(賃上げ枠)を活用する計画を立てた。
従業員育成の仕組みづくり——口頭伝聞に頼っていた現場運営をマニュアルと基準の整備によって仕組み化。「誰が担当しても一定水準のサービスが出せる」体制の構築に向けた方向性を示した。
経営改善計画書の策定——客数・客単価・変動比率・営業時間の各施策をつなぎ合わせた計画書を作成。簡易キャッシュフローをプラスにすることを当期の目標に設定した。
成果
グルメプラットフォームを一本化したことでランキングが上昇し、集客の分散が解消された。新しいスタッフの採用と食材品質の見直しを組み合わせ、段階的な単価引き上げの具体的なシナリオが出来上がった。「売上が増えているのに利益が出ない理由が、客単価の問題だということが分かりました。何をすべきかが明確になった気がします。」
支援を振り返って
この案件で面白かったのは、「売上が伸びているのに赤字」という一見矛盾した状況の解読でした。
過去3年で売上が約1,500万円増えている。客数も着実に増えている。なのに利益が出ない。この構造を「客数×客単価」に分解すると、答えが見えてきました。客数は十分に積み上がっている。問題は、その集客力に見合った単価設定ができていないことだった。
変動比率29%という数字は、この会社の隠れた強みです。原価管理がきちんとできている証拠で、値上げをしても利益を出せる体質が整っている。「この数字を守りながら価格を上げていけば、利益構造は大きく変わる」とお伝えしたとき、代表者の顔がはっきりと変わりました。
店長の退職という痛手が、逆に「仕組みで動く組織を作る機会」になりました。特定の人に依存した運営から脱却するのは大変ですが、それを乗り越えた先にある強さは、個人依存よりはるかに持続性があります。
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